百日咳が流行しています。

百日咳が流行しています。

 

当診療所では、令和7年1月に入ってから百日咳の患者さんが増え、3月14日現在、18人の患者が出ています。

京田辺市・八幡市・枚方市・京都市と広く患者さんが出ており、地域全体で流行していると思われます。

1歳から成人までおられますが、小学校中学年~高学年が多いです。

 

百日咳患者はどのくらいいるの?

百日咳は診断が面倒で、

誰が見ても百日咳とわかるころには菌が消失していたり、

抗体検査も場合によっては2回採血をする必要があり、

2回目の採血はよっぽど症状がつらくないと同意していただけません。

(誰だって痛いのはイヤなので・・・)

そのため、この18人は「確実に百日咳」と診断がついたものであり、

その後ろには、いったいどのくらい診断がつけられなかった百日咳の患者がいるのか、想像もつきません。

(百日咳は1人出ると10~15人にうつすと言われているので、10倍くらいいるかもしれません)。

 

百日咳の症状

「かぜと診断されていたのですが、何をやっても咳が止まりません」という訴えで診療所に来られます。

発熱はなく、最初は鼻水と軽い咳といった風邪症状ではじまるので、かぜと診断されるのも無理はありません。

しかしその後、

(とくに夜間に悪化する)自分で止められない咳込みがある、

(コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン・・・・と息ができなくなるまで続けてみると百日咳の咳に近くなります)、

咳込んで何度も起きてしまう

咳込み過ぎて嘔吐してしまう、

顔が真っ赤になり顔中に点々と出血が見られる、

息ができないくらい咳込んで咳が止まった瞬間にヒューと息を大きく吸い込む

(ウーピング whoopingといいます)、

あまり長く続いて肋骨が骨折する、

(「咳をするたびにめちゃくちゃ痛い」という方もいます)、

といった症状が最も典型的です。

もちろん、もう少し軽いこともありますし、

むしろ日中に咳が多いという人もいました。

 

これがどのくらい続くのかというと、

現在診療所に来られている患者さんでは、

お正月頃から咳が止まらなくなり、

3月中旬でもまだ症状が出ることがあるというので、

在70日くらいでしょうか、

もしかしたら本当に100日までいってしまうかもしれません。

ここまででなくとも1か月くらいはふつうに咳込んでいるように思います。

 

ワクチンの効果

「なんで? ワクチンうっているのに・・・」と思うかもしれません。

現在接種されている四種混合ワクチンや五種混合ワクチンは、

効果が4~7年で減衰することがわかっており、

早ければ小学生に入るころにはすでに免疫がない場合もあります。

 

百日咳は乳児がかかると無呼吸痙攣(百日咳脳症)などで場合によっては生命の危険があることもあります。

私は、病院で当直をしているときに、

百日咳で入院していた赤ちゃんが深夜帯に無呼吸を起こし、

やむなく人工呼吸器を使用しなければならなくなった経験をしています。

病院の中だったからよかったものの、ご家庭だったら危なかったかもしれません。

そのため、どちらかというと、赤ちゃんを重症化から守るためのワクチンということになります。

(もちろん完全ではありませんが、ある程度十分な感染予防効果もあります)

 

また、1回罹っても10年くらいで免疫が切れるので、何度も繰り返してかかる可能性もあります。

まず、家族のどなたかが、職場、学校などで感染し、ご家庭に持ち込みます。

家族に1人患者がでると80~90%の確率で他の家族に感染すると言われています

(発症するかは免疫などもあり、また別の問題です)。

当院では小学生のきょうだいからはじまり、1歳10か月のきょうだいからも百日咳菌の遺伝子が検出されています。

このお子さんは、幸い四種混合ワクチンを4回行っていたため、比較的軽症でした。

 

百日咳の治療と予防

発症後間もない時期に診断がついて治療を開始した場合は、比較的軽症で済む可能性がありますが、

発症してから1か月経過をした場合、なかなか症状が止められないこともあります。

百日咳による咳込みは、百日咳毒素により起こり、

抗菌薬治療を行って百日咳菌を除去しても毒素がずっと残るのです。

ふつうの去痰剤や気管支拡張薬では止められず、リン酸コデインという強力な咳止めでなければ止められないのですが、

現在12歳未満の使用は原則禁忌(使ってはならない)のため、

メジコンというもう少し効果の弱い咳止めしか使えません。

 

もしご家庭にまだワクチン接種できない新生児や、規定回数を接種できていない乳児がおられる場合は、ご注意下さい。

百日咳の重症化を防ぐにはワクチンしかありません。

四種混合五種混合接種していない方は接種してください

また小学生以上(成人も含め)で、ご家庭にワクチンを接種していない新生児や乳児がおられる場合

他の家族三種混合ワクチンを接種することは可能です。

(残念ながら自費になりますが・・)